私は現在32歳の専業主婦です。
今は子供2人を子育て中で、ペットを飼う余裕はありません。
たまにペットショップで犬を見て、可愛いなぁと眺めるくらい。
犬を飼っているご近所さんが羨ましいと思う時もあります。
かつて私が小学5年生のころ、どうしても犬が欲しいと親にねだったことをきっかけに、犬を飼うことになりました。
当時私が欲しかったのは、ミニチュアダックスフンド。
あの短足と愛らしい顔がとてもかわいいですよね。
とりあえず犬種はなんでもよかったので、親が犬を飼うことを了承してくれたあと、子犬が産まれたという知人に頼んでくれたようでした。
「シーズーがくるよ」
そう聞いて、図鑑を見て
「シーズーかぁ…うーん、まあまあかな」なんて偉そうに思っていましたが、
数日後「ごめん、シーズーじゃなくてパグだって」
…パグ?聞いたことないぞ。
もう一度図鑑を開き、パグを探しました。
…なにこの犬?これ犬?
当時小学5年生の私はその時初めてパグという犬種を知りました。
図鑑を何度も読んでいたはずなのにパグだけはなぜか頭に入っていなかったようです。
まるで未知の生物…。顔は黒くてしわしわで目がぎょろっとしていてエイリアンみたい。なのに手足はすらっとしている…。
この犬がくるのか…。内心ガッカリした記憶があります。
そしてついに我が家に犬がやってくる!
その日は家族全員がそわそわしていました。
我が家に来てくれた犬は、生後2か月くらいの小さなパグ。
図鑑で見た犬よりずっとずっと可愛かったことを覚えています。
当然子犬でコロコロしているので余計可愛いのです。
パグは、興奮して和室を走り回っていました。
普段クールぶっている兄達もキャッキャ言いながらパグと走り回っています。
犬が嫌いだと言っていた父は、実はそれは嘘だったらしく、にまーっと笑っています。
犬好きな母は張り切っていました。
パグに名前は兄がつけました。
その名も「ケンタ」(健太)
人間みたいだけどいい名前だと今でも思います。
初めての散歩の日、楽しみで楽しみでしょうがなくて、早朝4時に起きてしまったことを覚えています。
健太と色んな所へ散歩へ行きました。
コースは大体決まっているけど、空き地で走ったり、外でのびのびしている健太は可愛かったです。
健太は大人しくて内気でお利口な犬でした。
あまり吠えなくて、丸一日声を聞かない日もザラにありました。
たまに、夕方の放送にあわせて遠吠えしたり、庭に現れた猫に向かって吠えたりして、
その声を聞くのが楽しみでした。
パグといえばイビキです。豪快なイビキを毎日聞かせてくれて家族を和ませてくれました。
小学生だった私は、面白半分で家の留守番電話の録音に、健太のイビキを録音して遊んだりしました。
そのままにしていたら、たまたま電話をかけた叔母が留守電になった途端ゴーゴー音がするので何事かと思ったそうです。
小学5年生からうちに来た健太。
家族みんなから愛されました。
私たち兄弟がが思春期に入り、家族の会話が減っても健太を中心に会話がなくなることはなく、
皆が健太の存在をよりどころにいていたと思います。
特に母は、主な世話をしていれくれたので健太が一番懐いており、よく健太に話しかけていました。
私は社会人になり、健太は11歳になりました。
大きな怪我も病気もなく、しかし段々と老犬らしくなっていきました。
少し足腰が弱って、寝る時間が長くなり、食も細くなり、目も濁っていき、
それでも家族が帰宅すると、玄関までお迎えにきてくれて尻尾を振ってくれていました。
私が社会人5年目になった頃、どうも健太の様子がおかしくなりました。
健太16歳。
ぐるぐる回ることが多くなりました。そしてまるで赤ちゃんのように、夜起きて鳴くのです。
どうも、痴呆が進んでしまっているようでした。
私はその頃実家を出てしまっていて、健太の介護は両親がしてくれていましたが、
母は睡眠不足がかなり辛いようでした。
そんな時、私は結婚が決まり、8月に結婚式を挙げることとなり、その日は
終日健太をみていられないので、動物病院に預けることになりました。
私の結婚式は滞りなく終わりました。
しかし、結婚式が終わり、父が動物病院に健太を迎えに行ってくれたのですが、
その帰り道、健太の様子がおかしくなってしまい父は動物病院に引き返しました。
健太はもう息を引き取っていました。
きっと、痴呆で自分のことが分からなくなっている状態でも、動物病院の狭いケージの中で一日過ごして
苦しくて苦しくてしょうがなかっただろう…。
その場でもう死んでしまってもおかしくなかったんだと思います。
せめて、最後に父に会えて良かった。
健太は最後の最後に、父が迎えに来てくれて安心して天国へ旅立ったのかもしれません。
16歳という歳。そして痴呆。
私の結婚式がなかったとしても、先は長くなかったかもしれません。
母も、介護が限界だったから、よかったんだよ、と言ってくれました。
それでも私は悔やまずにはいられません。
私が結婚式を挙げていなかったら…
健太を動物病院に1日中預けるなんてことがなかったら…
健太は狭いケージの中で苦しむこともなかった。
狭いケージの中で不安な思いをさせることもなかった。
同じように老衰で死んだとしても、ずっと安心できる家の中で過ごせたのに。
健太の一生の最後の時間を、私のせいで苦しいものにしてしまった。
未だに悔やんでいます。
大好きな健太。天国でどうしてるかな。
お母さんパグの花子ちゃんと一緒にいるかな。
私もいつか死ぬと思うと怖いけど、健太に会えるならいいかな。
健太がくれた16年間は、私たち家族全員にとってかけがえのない時間でした。
健太、うちに来てくれてありがとう。
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